中継輸送・共同輸送

中継輸送・共同輸送

日本における企業の垣根を超えた共同輸送の増加に関するレポート

日本における企業の垣根を超えた共同輸送の増加に関するレポート

1. 共同輸送が増加している背景・理由


近年、日本の物流業界では企業を超えた共同輸送(複数企業がトラックや物流拠点を共有し商品の配送を協力する取り組み)が注目されています。その背景には、以下のような業界全体の課題と環境の変化があります。

- 物流人材の不足と「2024年問題」への対応: 少子高齢化に伴うトラックドライバーの人手不足が深刻化しており、2024年4月からは働き方改革関連法により長時間労働の規制が強化されます。この「物流2024年問題」によって運べる貨物量が減少する懸念があるため、効率的に輸送リソースを活用する共同輸送への期待が高まっています。実際、従来は各社が別々にトラックを走らせていた結果、日本国内のトラックの平均積載率は2010年度以降40%以下に留まる低水準で推移しており、多くのトラックが空車スペースを抱えたまま走行していました。ドライバー不足の中でこの非効率を是正する手段として、荷物を積み合わせて運ぶ共同輸送が注目されています。

- 物流コストの上昇と効率化ニーズ: 燃料費の高騰や人件費の上昇により、物流コストは年々増加傾向にあります。加えて、ECの普及等で小口配送・多頻度配送が増え、一社単独では非効率になりやすい状況です。共同輸送によってトラック台数自体を削減し、複数社で積載率を上げることで、輸送コストの削減が可能になります。例えば、トラック台数の削減により燃料費や人件費の削減効果が得られ、全体の物流コストを大幅に圧縮できます。実際に共同輸送を導入して年間17.6%もの配送コスト削減を達成した事例も報告されており、コスト面でのメリットが共同輸送推進の大きな動機となっています。

- 環境規制の強化とカーボンニュートラルへの対応: 脱炭素社会の実現に向け、運輸部門にもCO2排出削減が求められています。トラック輸送は物流におけるCO2排出源の一つですが、共同輸送によって走行車両台数を減らし、一度にまとめて運ぶことで輸送あたりのCO2排出量を削減できます。共同輸送は環境負荷低減に有効な手段であり、企業のCSRやSDGs達成にも資する取り組みとして評価されています。環境規制強化の中で、単独輸送よりも環境対応に優れる共同輸送へのシフトが促されています。

- 災害対応・サプライチェーン強靭化: 日本では地震や台風など自然災害が頻発しており、単独企業だけでは物流網維持が難しい局面も増えています。他社と協力した輸送ネットワークを構築しておけば、災害時に融通し合って配送を継続したり代替ルートを確保したりしやすく、供給網の強靭化につながります。このようにレジリエンス(復元力)の観点からも共同輸送の有用性が見直されています。

- 政府の政策支援と業界横断の取り組み: 国も物流の共同化を重要施策として後押ししています。国土交通省は深刻な人手不足や度重なる災害、地球環境問題への対応を背景に、「企業の垣根を越えた連携」による物流効率化・生産性向上を強く推奨しています。実際、政府は「ホワイト物流」推進運動等を通じて荷主・物流事業者の商慣行見直しや協力体制構築を促し、物流総合効率化法に基づく支援策で共同物流プロジェクトを認定・支援する仕組みも整えています。例えば、複数企業が連携して輸配送や保管を共同化する取組みに補助金や税制優遇を与え、荷主企業の意識改革を促す施策が取られています。また、経済産業省と連携してグリーン物流パートナーシップ会議を設置し、CO2削減につながる共同輸送事例の表彰・普及も行われています。こうした政策的後押しにより、業界全体で企業間連携の機運が高まりつつあるのが現状です。

以上のように、人手不足・コスト増・環境対応といった課題の解決策として、そして行政の後押しも受けながら、共同輸送は日本の物流における重要なトレンドとなっています。効率化と持続可能性の両立を図る手段として、従来は競合であった企業同士が協力するケースが増えているのです。

2. 具体的な共同輸送の事例

実際に、日本各地・各業界で企業の垣根を超えた共同輸送の取り組みが進んでおり、大手から中小まで様々な企業が協業による効果を上げています。以下に代表的な事例を紹介します。

- 清涼飲料業界(競合メーカー同士の協業配送): 緑茶飲料大手の伊藤園とコカ・コーラ ボトラーズジャパンという競合関係にある飲料メーカー2社が、愛知県新城市周辺エリアで共同配送を開始しました。これは両社それぞれの物流拠点から小売店への配送を一本化するもので、トラックとドライバーをシェアして両社の製品を混載配送しています。1台あたりの積載量を高めつつ走行距離を減らすことで輸送効率を向上させ、CO2排出削減など環境負荷低減にも貢献しています。この協業は「物流2024年問題」への対策として実証実験を経て本格導入されたもので、両社は非競争分野では協調し持続可能な物流体制を構築する方針です。競合同士が協力する異例の取り組みですが、安定供給と環境対応という共通課題の下で実現した成功例と言えます。

- コンビニエンス業界(ライバル企業の共同輸送): 大手コンビニチェーンのローソンとファミリーマートも、冷凍・冷蔵商品の共同輸送に乗り出しました。2020年と2022年に業界3社(ローソン・ファミマ・セブンイレブン)で共同配送の実証実験を行った後、得られた知見をもとに両社で協議を継続し、2024年4月から東北地方の一部エリアで本格的に協業を開始しています。両社の物流拠点同士でアイスクリームや冷凍食品を一台のトラックに混載し、店舗への幹線輸送を共同化する仕組みで、これによりトラック台数削減とCO2排出量削減を図っています。両社の配送センターの位置関係や取り扱い商品が適合したこと、実証実験で運用の目途がついたことから共同輸送が実現しました。全国津々浦々に店舗網を持つコンビニ各社にとって、安定的な物流網の維持は社会インフラの観点からも重要であり、今後は他地域への展開も視野に入れ効率化を進める計画です。ライバル同士が配送でタッグを組むこの事例は、業界に先駆けた協調モデルとして注目されています。

- 食品メーカーの物流統合(F-LINE社の設立): 食品業界では、複数の大手メーカーが出資して共同物流会社を設立し、自社物流を統合する動きもあります。味の素、ハウス食品、カゴメ、日清フーズ、日清オイリオの食品大手5社は、2019年に共同出資で「F-LINE株式会社」を立ち上げ、それまで各社個別に行っていた物流機能を一本化しました。F-LINEでは配送だけでなく在庫管理や倉庫拠点も共有化し、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯に対応した全国物流網を構築しています。統合後は、従来各社が別々に持っていた物流拠点を集約・増強してカバーエリアを拡大し、きめ細かな配送サービスを実現しました。例えば、これら5社の商品は納品先(卸売業者のセンターや量販店のセンター)が重複しているケースが多く、共同配送によって重複を解消することで効率が飛躍的に向上しています。各社それぞれ少量多品目を出荷する形態でしたが、一緒に運ぶことで荷物がまとまり1社あたりの配送コストが低減したと推計されています。このように、同業複数社が連合を組んで物流インフラ自体を共同化した例としてF-LINEは業界の注目を集めており、持続可能な物流体制づくりのモデルケースとなっています。

- 自動車業界(補修部品の共同輸送): 自動車産業でも、メーカーの垣根を越えた部品物流の協調が進み始めています。トヨタグループのトヨタモビリティパーツ株式会社は、自社(トヨタ)とスバル・ダイハツなどグループ外も含めた自動車補修部品の共同配送網構築に乗り出しました。各メーカーで別々だった全国の補修部品供給網を連携させ、地域ごとに配送車両を共有して効率化する取り組みです。この決定の背景には、やはりドライバー不足や環境対応といった物流課題があり、業界全体でネットワークを効率化しないと安定供給が難しくなるとの判断があります。実際にトヨタモビリティパーツでは2022年に栃木県で他社と共同配送を試行し、現在全国展開に向け活動中です。しかし各社で使用する物流システムや荷札(ラベル)の仕様が異なるため、現場運用に齟齬が生じる課題がありました。そこで、パナソニックの協力を得て他社の伝票情報をトヨタ標準のラベルに変換するシステムを導入し、異なるシステム間のデータ連携を実現しています。この結果、他社製品も自社製品と同様に取り扱えるようになり、高品質な配送を維持しつつ共同化を可能にしました。また、トヨタ以外にも日産自動車と三菱自動車が部品物流を共同化したり、いすゞとUDトラックスが補修部品の共同配送を行うなど、同業他社同士で協業する動きが出ています。自動車市場の先行き不透明の中で、メーカーの垣根を超えた物流協力が今後さらに進展するか注目されています。

- パン業界(中小メーカー間の共同配送・物流事業者の仲介): 食品の中でもパン製造業界では、多くのパンメーカーが各自でスーパー等に配送網を持っていましたが、配送先は重複することが多く非効率でした。大手物流会社の佐川急便は、業界全体の課題である配送コスト高騰やドライバー不足を解決するため、「パンの共同配送」を立ち上げました。佐川急便がハブとなる共同配送センターを用意し、複数のパンメーカーの商品を一括で仕分け・積み合わせて店舗へ配送するスキームを構築したのです。これにより、各メーカーは自社便を削減でき、配送コストや配車業務の負担が大幅に減少しました。またトラック台数削減の効果で年間18.7%のCO2排出量削減にもつながっています。従来は競合他社同士だったパン各社も、物流面では中立的な佐川急便を介することで協調が可能となり、結果として業界全体の効率化と環境負荷低減を実現した成功事例です。

- 商業施設とテナント企業の共同配送(流通業界の新モデル): 小売流通業界では、ショッピングモール大手のイオンモール株式会社が中心となってテナント企業の商品配送の共同化サービスを展開しています。各専門店(テナント)やメーカーの物流拠点から商品を集荷し、イオンモールや他社の商業施設、路面店などの各店舗へまとめて配送する共同輸送網を構築しました。物流課題が深刻化する中、テナント企業への付加価値提供として開始されたサービスで、当初は限られた地域(近畿・東海エリアなど)で実施されていましたが、ニーズの高まりに応じて2023年2月には提供エリアを7エリア・24都道府県に一気に拡大しています。この共同配送サービスにより、テナント各社は自社で店舗ごとに配送する手間が省け、物流コスト削減とサービス品質維持を両立できています。イオンモール側にとっても、自社施設への搬入を集約できるため効率が上がり、さらに他社の商業施設や都市部の路面店向け配送も請け負うことで事業拡大につなげています。このように、小売プラットフォーマーがハブとなって多数の取引先企業の物流をまとめるモデルは、新たな共同輸送の形態として注目されます。

以上の事例からも、共同輸送には様々な形態があることが分かります。同業他社同士の協業(飲料メーカーやコンビニ各社)、異業種間での連携(食品メーカー連合や自動車メーカー間)、物流企業がハブとなる異業種混載(佐川急便の取組み)、流通業者による垂直統合型の共同配送(イオンモールの例)など、多彩なパターンで実践されています。それぞれ課題はありつつも、コスト削減や効率化、環境負荷低減など明確な成果が報告されており、物流担当者にとって非常に示唆に富む成功例と言えるでしょう。

3. 今後の展望と課題

共同輸送のさらなる発展可能性

共同輸送の潮流は今後ますます強まると見込まれます。その理由の一つは、現在まだ各社個別で行っている輸配送業務の中に共同化の余地が大きく残されているためです。ある調査では、日次のトラック運行のうち約41.3%に共同輸配送の実現可能性があるとの分析結果も報告されています。すなわち、約半分近くの輸送が他社との積み合わせによって効率化できる潜在性を持っているということです。このような余地を埋めていくことで、共同輸送は今後さらに広範に普及・拡大する余地があります。

また、デジタル技術の革新と物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展が、共同輸送の発展を強力に後押ししています。近年、物流業界では車両動態管理や配車計画にAI・IoTを活用する取り組みが活発で、輸送マッチングのプラットフォーム化が進んでいます。例えば、日本パレットレンタル(JPR)が提供する「TranOpt(トランオプト)」は、参加企業の輸送ルート情報をデータベース化し、AIを用いて異業種間の荷主同士をマッチングすることで共同輸送を実現するサービスです。膨大な輸送データから帰り便の空きや積載率の低いルート同士を自動で組み合わせ、効率的な混載輸送を提案します。こうしたAI搭載のマッチングシステムを使えば、従来は見つけにくかった「相乗り」相手を迅速にマッチングでき、共同輸送のハードルが大幅に下がります。

さらに、大手IT企業や物流企業が連携し、業界横断型のオープンプラットフォーム構築に着手しています。たとえば、ヤマトホールディングスやJR貨物などが出資する新会社SST(株式会社シェアリング・システム・トランスポート)は、標準サイズのパレットと標準化された物流データを用いた共同輸配送のオープンプラットフォームを開発し、2024年から本格稼働を開始しました。このプラットフォーム上では、あらゆる荷主企業と物流事業者の出荷計画・空車情報を共有し、幹線輸送をベースにリアルタイムで最適な組み合わせをマッチングします。富士通などIT企業も加わってサプライチェーン全体のデータ連携基盤を構築しており、標準化された情報により異業種間でもスムーズに協調できる仕組みを目指しています。この「SST便」と呼ばれるサービスでは、実証段階ながら共同輸送システム上で複数荷主・複数運送会社のマッチングが行われ始めており、業界の注目を集めています。

加えて、「物流MaaS(物流版Mobility as a Service)」や「フィジカルインターネット」といった新概念も展望として語られています。物流MaaSとは、複数の輸送モードや事業者のサービスをデジタル統合し、需要に応じて最適な配送手段を融通する考え方です。フィジカルインターネットは、インターネットのように世界中の物流網を標準化・オープン化して相互接続する構想で、将来的には異なる企業や地域の物流ネットワークがシームレスにつながり、貨物が最適経路で流通する未来が描かれています。日本でも経産省や国交省がこれらのビジョンに沿った研究や実証を進めており、将来の物流インフラの大きな方向性として認識されています。

技術革新以外にも、共同輸送の新たな形態として注目されるのがマッチングプラットフォームの普及です。上述のTranOptやSSTのように企業間マッチングを支援するサービスの他、輸送マッチングのスタートアップ企業も登場しています。例えば、物流ベンチャー各社が「空きトラック情報」と「荷物情報」をリアルタイムでマッチングするスマホアプリやクラウドサービスを提供し始めており、中小企業でも手軽に他社と共同輸送の交渉ができる環境が整いつつあります。これにより、地場の中小メーカーが近隣企業とトラックをシェアしたり、帰り便を有効活用したりといったきめ細かな共同配送が増える可能性があります。

総じて、デジタル技術とオープンプラットフォームの活用によって、これまで実現が難しかった柔軟な共同輸送が可能になりつつあります。今後は物流ネットワーク全体が高度に連携・融合し、必要なときに必要な分だけ運ぶ「シェアリングエコノミー型」の物流が主流になる展望も描かれています。共同輸送はさらに発展し、単なるトラックの相乗りに留まらず、在庫や拠点の共有、異業種サービスとの連携(旅客交通との連携配送など)といった新しい展開も期待されます。

共同輸送推進における課題と解決策

一方で、共同輸送のさらなる拡大には乗り越えるべき課題も存在します。業界が直面する主な課題と、その解決策の方向性は次の通りです。

- 異なるシステムや商習慣の調整: 複数企業が物流を共有する際、各社ごとに管理システムや荷札仕様、運用ルールが異なることが障壁になります。実際、前述の自動車部品共同配送でも、ラベルやシステムの違いが最大の課題となりました。解決策としては、業界標準の規格やシステムを策定・導入することが有効です。例えば共通の配送ラベルやデータ連携フォーマットを採用する、あるいは中立的なクラウドプラットフォーム上で在庫・オーダー情報を共有するなど、ITを活用した標準化が必要です。政府も「荷姿やシステム仕様、納品条件等の標準化」を物流政策の柱に掲げており、今後こうした取り組みが加速するでしょう。標準化が進めば、企業間で情報をスムーズにやり取りでき、共同輸送の実務負担が軽減されます。

- コストと利益配分の公平性: 共同輸送では、参加企業間でコスト削減効果や利益をどう配分するかが課題になります。例えばトラックを共同利用した場合、どの企業の貨物がどの程度スペースや重量を占めたか、費用負担をどう按分するか、といったルール作りが必要です。また、効率化による削減分の恩恵が一部の企業に偏らないようにする調整も求められます。解決策としては、明確なコスト配分スキームを事前に合意しておくことが重要です。運行費用を距離や重量に応じて案分する、公平な数式を用いる、あるいは第三者の物流会社に運行を委託して運賃として支払う形にする(共同配送業者を介すれば各社は運賃支払いという平等な立場になる)などの方法があります。実際、共同配送専門の物流業者を活用するモデルでは、ケース単位の料金体系にすることで参加各社が明確で納得感のあるコスト負担を実現しています。このようにコスト面の取り決めを透明かつシンプルにすることが、長期的な協力関係を築く上で不可欠です。

- 競合企業間の協調と信頼構築: ライバル関係にある企業同士が協力する場合、機密情報の漏洩リスクや信頼関係の構築に慎重になる傾向があります。販売動向が分かってしまうのではないか、相手の物流事情が透けて見えてしまうのでは、といった懸念です。これに対しては、共同輸送する領域を限定することが有効です。例えば、伊藤園とコカ・コーラの例では特定地域の配送に絞り、なおかつ製品カテゴリーも清涼飲料という共通分野で協業しました。お互いのマーケティング戦略に直結しにくい「物流部分」にフォーカスすることで協業が実現しています。また、第三者を交えた協定やルール策定も信頼醸成に役立ちます。業界団体や物流企業が間に入り、データの扱いや守秘義務に関する契約を結ぶことで安心して情報共有できる環境を整えます。さらに、初期は期間限定の実証実験として始め、小さく成果を出しながら信頼を深めて本格展開に移行するアプローチも有効でしょう。少しずつ協調実績を積み重ねることで、競合間でも協力関係を築くことが可能です。

- 運用上の調整負荷(リードタイムやトラブル対応): 共同輸送では複数社の物流スケジュールを擦り合わせる必要があり、単独配送に比べて調整業務が増える面があります。納品日時の調整や遅延発生時の対応など、合議が必要な場面が増えることから、迅速な意思決定フローを作ることが課題です。これに対しては、事前の合意事項を綿密に定めておくことが解決策になります。共同配送開始前に、リードタイムの設定(多少の遅れを許容する代わりに共同化する等)、緊急時の代替措置(一社の貨物だけ緊急配送する場合の費用負担など)、クレーム発生時の責任分担などを取り決めておく必要があります。また、デジタル技術の活用で調整負荷自体を減らすこともできます。各社の出荷データをリアルタイムで可視化し、AIが最適ルートやスケジュールを自動調整するような仕組みを導入すれば、人手による煩雑な調整作業を減らせます。国土交通省もリードタイムの延長や検品簡素化等の「タテの連携」(発荷主と着荷主間の調整)を推進するとしており、荷主側の協力も得ながら無理のない共同輸送スキームを設計することが大切です。

- 初期投資や拠点整備の問題: 共同輸送を始めるにあたって、新たに共同の配送センターを設けたりシステムを導入したりといった初期投資が必要になる場合があります。特に中小企業にとって、大きな資本負担は参入障壁となりえます。これに対しては、国の補助制度の活用や、投資を共同で負担するスキーム作りが考えられます。実際、グリーン物流パートナーシップ事業等では共同物流拠点の整備に補助金が出たケースもあります。また、物流会社主導で施設を整備し参加企業は利用料を払う形にすれば、一社ごとの負担を平準化できます。加えて、既存インフラの有効活用も重要です。各社の遊休スペースを共有倉庫として使ったり、地域の物流ハブ(例えば道の駅や産地集荷場など)を拠点化したりすることで、新規設備投資を抑えて共同化を図る工夫が求められます。

以上のように、共同輸送には解決すべき課題もありますが、それらに対しては標準化・デジタル化の推進、明確なルール策定、信頼醸成の段階的アプローチ、そして公的支援の活用といった施策が有効と考えられます。業界全体で知見を共有しベストプラクティスを積み上げることで、これらの課題は一つずつ克服されていくでしょう。

おわりに

日本の物流における企業間共同輸送の潮流は、労働力不足や環境対応といった喫緊の課題に対する有効な解決策として今後も拡大していくと予想されます。すでに紹介したような数多くの成功事例が生まれており、物流効率の飛躍的向上やコスト削減、CO2削減といった実績が明らかになっています。テクノロジーの進展と行政の後押しも追い風となり、新たな参加企業やサービスモデルが次々に登場しています。

物流担当者にとっては、共同輸送はもはや検討必須の戦略と言っても過言ではありません。他社との協業によって自社単独では得られないメリットを享受し、厳しい経営環境を乗り切ることが求められるでしょう。その際、本レポートで分析した背景理由を踏まえて、自社の置かれた状況に合致する形で共同輸送のスキームを設計することが重要です。幸い、日本には業界や規模を超えて協調する土壌が育ちつつあり、「物流は競う時代から協創(共に創る)の時代へ」移行しつつあるとも言われます。

今後は、さらに多様なプレイヤーが参画するオープンな物流ネットワークが構築され、効率的かつ持続可能なスマート物流が実現していくでしょう。共同輸送の取り組みは、日本の物流業界全体の競争力強化と持続可能性確保に寄与する実用的解決策として、一層の発展が期待されています。

【参考文献・情報源】

- 国土交通省, 「連携による持続可能な物流に向けて」検討会資料(2020)  
- Hacobu菅原利康, 「共同輸配送とは?メリット・デメリットや課題…」 *ハコブログ*(2025年2月3日更新) 他  
- 運行管理ナビ, 「トラックの積載率とは?平均と推移…」(2024年12月26日)  
- 北王流通, 「食品共同配送事例:共同配送導入で年間17.6%の配送コスト削減!」(事例紹介)  
- 佐川急便, 「パン業界における共同配送の事例紹介」(2023年)  
- 伊藤園ニュースリリース, 「伊藤園とコカ・コーラBJが愛知県で協業配送を開始」(2024年8月30日)  
- ローソンニュースリリース, 「ローソンとファミマの共同輸送開始について」(2023年)  
- プロレド・パートナーズ, 「物流費のコスト削減 “共同配送(輸送)について”」(2024年12月更新) 他  
- パナソニックコネクト事例, 「トヨタモビリティパーツ:自動車メーカーの垣根を超えた共同配送」(2022年)  
- Aidiotプラス, 「共同配送のメリット・デメリット〜企業の事例も紹介〜」(2024年11月14日) 他  
- 富士通プレスリリース, 「共同輸配送のオープンプラットフォーム『SST便』提供開始」(2025年1月27日)


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